元廣匡伸氏。
有限会社元廣建築設計事務所 代表取締役。
広島県尾道市に拠点を置き、竹原市立竹原小学校など、地域に根差した作品を多く世に送り出してきた元廣氏。現在は、西日本豪雨災害で甚大な被害を受け閉鎖に追い込まれた宿泊施設『旧かんぽの宿竹原』の、官民連携によるリノベーションと再稼働を手掛けている。
竹原市の地域振興策において、議会・行政・地元経済からの大きな期待を背負いながら、廃墟の復興事業に立ち向かう元廣氏の、建築への想い、大切にしているもの、印象に残っている作品、同氏が考える建築家の未来について、伺ってみた。
建築士を目指したきっかけ
元廣氏は、小学校高学年で社会科の教科書に載っていた代々木体育館と霞が関ビルディングの写真から建築への興味と関心が芽生えました。中学生での技術家庭科での木工作業での成功体験が物作りへの情熱を育みながら、大学では建築を本格的に学び、建設会社での実務経験を経て建築士を目指しました。
資格取得の過程は困難でしたが、数回の挑戦の末に建築士としての資格を獲得。これらの経験が、人々の生活に寄り添う空間を創り出すことを使命とする、建築士としての道を築きました。
建築設計の仕事で大切にしていること
元廣氏が建築設計の仕事で最も大切にしているのは、『お客様の話を逃さず聞き取ることです。』
モダニズムや特定のカラーにこだわるよりも、お客様一人ひとりが持つ思いやストーリーを大切にして、それらを形にすることに注力しています。
各プロジェクトは一期一会と捉え、初めて出会う方々の想いを深く理解し、それを建築という形に昇華させることに専念しています。
御自身の印象に残っている作品を教えてください
竹原小学校の屋内運動場をもっとも印象に残った作品と考えています。このプロジェクトでは、従来の直線的な光の取り入れ方ではなく、より柔らかく、竹原の自然と調和するイメージに合った照明を意識しました。特に、ガラスではなくポリカーボネート壁面パネル(ルメウォール)を使用したことで、特有のほんわかとした光の効果を生み出すことができ、この斬新なアプローチは今も深く印象に残っています。
持続可能な建築の未来とは
持続可能な建築に関しては、元廣氏は、『自然環境との共生を重視し、建築物の設計と建設において、自然を最大限に生かすべき』だと考えています。過去の開発がしばしば自然を犠牲にしてきたことを鑑み、建築物を通じて自然の要素を強調し、保全することが今後の大きな課題です。
また、建築物の耐久性を高め、解体時にはリサイクルや再利用が容易になるような設計を心がけることで、資源の有効活用と温室効果ガスの排出抑制に貢献できると考えています。空き家問題への対応や、建材としての再生可能な資源の使用は、持続可能な建築の未来を形成する上で欠かせない要素です。これらの取り組みを通じて、持続可能な建築価値の提供に向けて努力しています。
有限会社元廣建築設計事務所 https://motohiro-arc.com/
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