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広島県の建築家

建築の魂を紡ぐ河口佳介、自然と共生するデザインの旅路

河口佳介氏。
K2-DESIGNARCHITECT&ASSOCIATES代表。 愛情と自然環境を融合させた作品は国内外で支持され、2018年には英国最高の『ASIA PACIFIC PROPERTYAWARD2018』でファイブスター賞を受賞。作品「大山の家」は中学生用の美術の教科書に掲載、現在は福山大学工学部建築学科教授に就任。
東京と広島を行き来する多忙な毎日の、日常にも発せられる鋭く柔軟な感性、建築家へのルーツとなった多感な少年時代、作品に生きる自然観。そして建築の未来について伺ってみた。

+K2-DESIGN 代表 河口 佳介-KAWAGUCHI KEISUKE-

  • 1967年 広島生まれ
  • 1990年 福山大学工学部建築学科卒業
  • 1990年 (株)鈴木工務店設計部勤務
  • 1999年 K2-DESIGN Inc.設立
  • 2005年 穴吹専門学校 非常勤講師
  • 2006年 日本建築家協会(JIA)正会員
  • 2010年 河口佳介 + K2-DESIGN 設立
  • 2023年 福山大学工学部建築学科教授就任

AWARD

  • 2011年 BARBARA CAPPOCHIN 国際ビエンナーレ2011 優秀作品賞「瀬戸内の家」
  • 2018年 ASIA PACIFIC PROPERTY AWARDS 2018 Architecture Single Residence 部門 5スター受賞「FLAT 40」他
FLAT40
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建築士を目指したきっかけ

河口氏が建築士の道を歩むことになったのは、幼い頃の多感な時期に起こった一つの出来事から始まります。 小学6年生の時、河口氏一家は裕福でしたが、ある日、祖父の会社が倒産し、一夜にして家を失ってしまうことに。
家族7人でボロボロのアパートに引っ越し、暮らすこととなりました。さらにそのアパートはたった2年で出て行かないとといけない約束でした。
アパートの隣には長屋があり、河口氏は父親と共に隣の長屋を修復し、住むための場所を作ることとなりました。父親は大工ではなかったが、一生懸命に家を建てる姿勢を見せ、家族のために尽力しました。河口氏は、この経験から建築への興味を持ち、家族を支えるために建築の道を選ぶことを決意しました。
河口氏の建築士への道は、家族への深い愛情と、困難な状況を乗り越えたいという強い意志から生まれたものでした。

建築設計において大切にしていること

河口氏は建築設計において、「自分のスタイルっていうのは特にないんだ。大事なのは、自然や環境に自分を合わせること。家庭内での家事の環境、特に冬の寒い時期にお弁当を作る母親の姿を想像してね。そこがやっぱり1番環境が厳しい。だから、快適で温かい空間を作ることを目指してるんだ。キッチンの設計にも特に注力してるんだ。家庭の中心となる場所に最適な環境を提供することが大事だと思っていて、愛情を込めた空間を創造することが、僕の目指すポイントなんだ。」と語ります。
彼の建築設計は、環境や家族構成などの条件に深く根ざし、日常生活の中での快適さを追求しています。家庭内での環境が厳しい場所を考慮し、快適で温かい空間を作ることを大切にしています。
河口氏の設計哲学は、愛情に基づいており、愛情を込めた空間を創造することを目指しています。

御自身の最高傑作を教えてください

河口氏は、「瀬戸内の家」を自身の最高傑作として挙げています。「これは命がけで作った」と語る河口氏は、銀行の融資が通るかどうかも分からない状況の中で、予算不足が明らかになりながらも、このプロジェクトに取り組みました。彼は、「朝6時に三原駅でスタッフに集まってもらい、雨が降るかもしれないからカッパを持ってきて」と指示し、一緒にコンクリートを打ちました。
この家は、彼とスタッフが一緒に作り上げたもので、彼の父親と家を作った経験がDNAとして彼に受け継がれていると感じています。

瀬戸内の家

河口氏は、「予算がないなら作ればいい」という原点に立ち返り、家を「買う」のではなく「作る」ことの重要性を強調しています。彼の図面にはプライスがついておらず、見積もりをして初めて価格が決まると説明しています。
彼はコンテストにも参加してきましたが、それは狙ってではなく、自然に通ったものだと述べています。河口氏の設計哲学は、計画的なものではなく、彼の内なる情熱と経験に根ざしているようです。

建築を考える時のアイデアや技術はどのようにインプットされていますか?

河口氏は、建築のアイデアや技術について、「僕の親父がファッションデザイナーだったんだ。色のハーモニーや質感にこだわるのは、勉強してないけど、家族から受け継いだDNAかもしれない」と述べています。彼は、小学校の頃から物の質感がわかるようになり、骨董品を通じて本物と偽物の違いを学んだと語ります。

河口氏は、「建築を作ることは、子供の感性を育てることにもつながる」と考えています。彼は、建築を通じて本物の素材を触り、見て、感じることが大切だと強調し、「それらを経験した子供たちの感性は、大人になったら花の開き方が違う」と述べています。

彼はまた、「建築家としての自分は、自分の中から出てきたものが全て」と語り、自分の生い立ちや経験から生まれるアイデアを大切にしています。河口氏は、雑誌を見て革新的なものを作るのではなく、自分らしさを表現することに重点を置いています。彼は、「自分の考えを表現できる人が建築家だ」と考え、自分の生き様を建築に刻むことに努力していると述べています。

持続可能な建築の未来とは

河口氏は持続可能な建築について、「サステナブルな建築とは、土地を掘削することなく、自然と調和しながら建てること」と考えています。彼は、建物を等高線に見立てて大地を再現する自身のプロジェクトを例に挙げ、「何もしないことが最もサステナブル」と述べています。グランピングのような、自然に優しい建築が究極のサステナビリティだと考えています。

河口氏は、自然災害を考慮し、自然と共存する建築を目指しています。彼は、「大山の家」プロジェクトで、敷地の木を一本も切らず、森の隙間を利用した建築を行いました。これは、自然の猛威と人間が共存する環境を考慮した結果です。

大山のゲストハウス -森の隙間-
大山のゲストハウス -森の隙間-

最後に、河口氏は、「どんな苦労や試練も、夢と希望を持って諦めずに階段を上っていけば、いつの間にか自分が行きたかったところまで登れて、そこから見える景色は、今まで見えなかったような景色が見える」と締めくくりました。彼の言葉は、持続可能な建築の未来に対する深い洞察と、若い世代への励ましを含んでいます。

河口氏とSustainableArch 編集長 下枝良輔

福山大学 建築学科 教員紹介 https://www.fukuyama-u.ac.jp/eng/architecture/kawaguchi-keisuke/

河口佳介+K2-DESIGN https://k2d.co.jp

~現在進行中のプロジェクト~ 
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※ このページ内の情報は、取材当時のものであり最新のものと異なる可能性があります。

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